嫌なら帰れ。実習先は除染現場だった ベトナム青年が夢見た日本は・・・
Yoshihito Hashimoto
外国人実習生を搾取する関係団体役員に
麻生、二階、甘利ら大物政治家たちが!
劣悪な労働環境を放置し甘い汁を
2018.11.22 LITERA
https://lite-ra.com/i/2018/11/post-4386-entry.html
安倍政権のゴリ押しがつづいている、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案の国会審議。きょうも、委員会の定例日ではないにもかかわらず衆院法務委員会の開催を自民党・葉梨康弘委員長の職権で決定、立憲民主党や共産党などの野党が反発し欠席した。しかし、自民党は安倍首相の外遊日程に合わせるべく来週27日までに衆院で同法案を“強行採決”させる予定だという。
この夏、数々の災害を受けて補正予算案のために臨時国会の召集を野党が求めても応じなかったのに、法案審議から逃げるためにセットされたとしか思えない安倍首相の外遊を理由に審議日程を決定する──。国会を愚弄するにも程がある話だが、そもそも、入管法改正案の問題点はどんどん膨らみつづけている状態だ。
現に、先日「データの捏造」が発覚した、失踪した外国人技能実習生の聴取票だが、衆院法務委の理事会メンバーしか閲覧ができず、コピーも不可のため、理事会メンバー数人が手書きで書き写すという地道な作業をつづけている。しかし、立憲民主党の山尾志桜里議員が書き写した聴取票20枚からひとりひとりの時間給を換算したところ、最低賃金以下だった人は17人にもおよんだという。しかも、この17人のうち、聴取票の「最低賃金以下」という選択肢にチェックしていた人はゼロで、「低賃金」にチェックした人も7人にすぎなかった。
ようするに、山下貴司法相は67%の技能実習生たちが「低賃金」を理由に失踪していたのに、それを「より高い賃金を求めて」失踪していると“捏造”したが、もともとの聴取データ自体、実態が正しく反映されていないのだ。
だが、さらなる問題も浮上した。それは、問題の聴取票には「監理団体」にかんする調査項目が存在していないことだ。
「監理団体」というのは、技能実習生を受け入れ企業に斡旋する団体のことで、協同組合や商工会など非営利法人であることが条件。さらに監理団体は、受け入れ企業が適正な技能実習をおこなっているかを確認・指導することになっている。だが実際は、監理団体が不正行為を受け入れ企業に指示するなど、劣悪な労働状況に加担していることも多い。
たとえば、技能実習生問題や入管問題の訴訟を手掛けてきた弁護士の指宿昭一氏は、「多くの場合、不正を指示するのは実習生受け入れ窓口の監理団体です。時給を300円から500円に上げようとしたら監理団体に「300円で統一しているからやめてくれ」と言われた岐阜県の縫製会社もあります」(長崎新聞8月17日付)と語り、ジャーナリストの安田浩一氏も「(監理団体の)実態は利益目的の人材ビジネス。各地で実習先を募り、実習生を送り込む。実習先から手数料を得て、自分たちが管理しやすいよう、長時間労働や低賃金を主導してきた」と指摘している(東京新聞11月16日付)。
また、今年、技能実習生に原発事故による除染作業をさせていたことが判明したが、このときも監理団体は技能実習生に「仕事は簡単」「誰でも出来る」としか説明していなかったという。
監理団体はこのように、技能実習制度で横行する不正行為の要因となってきた。にもかかわらず、その問題を隠蔽するかのように、失踪した技能実習生から監理団体について聞き取りさえおこなっていなかったのである。
法務省は昨年施行された技能実習適正化法によって「監理団体の適正化に取り組んでいる」と主張するが、不正行為はそれでも解消されていない。なぜ、政府は監理団体の問題にメスを入れようとしないのか──。
じつは、その背景にあるのが、大物政治家たちの存在なのだ。
関係団体の役員に、麻生財務相や二階幹事長ら大物政治家がズラリ
いま、技能実習生を12万人も送り出している最多国はベトナムだが、そのベトナム人技能実習生受け入れの監理団体のひとつに「公益財団法人東亜総研」という団体がある。そして、この同団体の代表理事・会長を務めているのは、自民党幹事長などを歴任した武部勤・元衆院議員。さらに、同団体の特別顧問に就いているのは、自民党の二階俊博幹事長なのだ。
監理団体には、技能実習生ひとりあたり毎月数万円の「監理費」が支払われる。「非営利団体」が条件としながらも、その実態は人材派遣業だ。そのため、技能実習生の保護よりも儲けを優先させる監理団体が後を絶たないのだが、そうした監理団体のトップや特別顧問に大物政治家が就いているのである。
しかも、この問題は同団体だけではない。ミャンマーからの技能実習生受け入れで「求人票の事前審査業務」をおこない、監理団体から手数料を徴収している「一般社団法人日本ミャンマー協会」の役員名簿(今年10月現在)にも、数多くの政治家の名前がズラリと並んでいる。
まず、名誉会長は中曽根康弘・元総理大臣。最高顧問は麻生太郎・副総理兼財務相。会長・理事職には渡邉秀央・元郵政大臣、理事長代行には古賀誠・元運輸大臣、理事には甘利明・自民党選挙対策委員長、浜田靖一・元防衛相……。このように、現役から引退した議員まで、自民党の大物議員が関係しているのだ。
また、役員名簿には自民党だけではなく、理事長代行には、公明党の重鎮である白浜一良・元参院議員や、理事に野田内閣で法務相を務めた民進党の田中慶秋・元衆院議員、立憲民主党の福山哲郎幹事長の名も記されている。
日本ミャンマー協会については、昨年6月6日の参院内閣委員会で自由党の山本太郎議員が取り上げ、大物政治家らの名前を列挙した上で問題をこのように指摘していた。
「この(日本)ミャンマー協会というのはすごくて、ようは、申請の事前確認作業をするにあたり、受け入れ監理団体から多額の手数料を徴収しているんですよね。しかも、一団体初年度10万円、そして翌年から毎年5万円、さらに送り出した人が3人増えるごとに1万円ずつ支払わなくちゃならないって、この行為、技能実習制度の適正な運用とは思えないんですけれども」
外国人技能実習生から搾取したお金は、政治家や官僚の関係組織に
まさに山本議員の指摘通りだ。しかも、今回の外国人労働者の受け入れ拡大 では、業種によってはほとんどを技能実習生からの移行を想定しており、受け入れ拡大によって監理団体はさらに儲かり、日本ミャンマー協会のような監理団体から手数料を徴収する団体にも多額の金が転がり込むことになるだろう。
いや、これだけではない。外国人技能実習生や留学生の問題を取材しつづけ、東亜総研や日本ミャンマー協会に政治家が絡んでいることを指摘してきたジャーナリストの出井康博氏の著書『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社)によると、技能実習制度を統括する「公益財団法人国際研修協力機構」(JITCO)は、監理団体や受け入れ企業からの会費によって年13億円近くを得ているのだが、このJITCOは法務省や厚労省など各省庁の天下り先になっているというのだ。
こうした問題を、出井氏はこのようにまとめている。
〈受け入れ企業の上には監理団体と送り出し機関があって、さらに制度全体を統括するJITCOが存在する。このピラミッド構造を通じ、実習生の受け入れが一部の業界関係者と官僚機構の収入源となっている。そして陰では、官僚や政治家たちが利権を貪っているわけだ。その結果、実習生の賃金は不当に抑えられてしまう〉
技能実習生たちが最低賃金以下で長時間労働を強いられた上、なけなしの給料からさらにむしり取られた金が、大物政治家や元官僚たちが関与する団体・機構に流れ込む──。だからこそ、政府は技能実習生の搾取の実態を「黙認」しようとするのだ。
しかも、だ。入管法改正案では、新設の「登録支援機関」に外国人労働者の支援をおこなうことになっているが、この機関には監理団体がスライドすると見られている。そして、現行の技能実習法では主務大臣が監理団体に対して指導や改善命令を出すことができるが、それが改正案では、登録支援機関には指導・助言しかおこなえない。つまり、より「甘く」なっているのだ。
生身の人間ではなく“安価な労働力”としか見ず、さらに外国人労働者を食い物にしようとする政治家や天下り官僚たち。こんな法案を成立させるようなことは断じて許されないだろう。
(編集部)
日本国内でも、官民あげて美しい言葉を使う人が増えていますが、日本人でさえ彼らが使う美しい言葉に騙されているのです。